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日本語のスライドを英訳するだけでは駄目だったー情報量と抽象性についてー

1. はじめに:英語スライドの違和感

先日まとまったページ数の英語でのプレゼン資料(パワーポイント)を作る機会があり、まず日本語で作成したスライドを自動翻訳で英訳してみた。出来上がったものを見るとどうも違和感が拭えず、結果的に日本語の資料を参考にしながら英語の下書きを作り、それをスライド化したため、かなり時間がかかってしまった。この中で日本語と英語でのプレゼン資料の作り方の違いについて気づきがあったのでメモにする

自動翻訳で作成したスライドの違和感とは、情報量が多い。読み手に圧迫感を与え、注意散漫にする。ネットで英語のスライドをいくつか検索してみてみたが、それらは言葉遣いがシンプルで、ほどよく抽象化されている。

2. 情報量が多くても成立する日本語、成立しない英語

これは読み手の問題でもある。筆者のような大半の日本人にとって日本語はネイティブであり、ネイティブ同士だと、やたら文字数が多くてもコミュニケーション成立するのではないか。そもそも広告や看板など、街の至るところに文字情報が溢れているので、大量の文字に対する耐性があるのだと思われる。

一方英語だと情報量を落としてシンプルな資料を作らないと、本当の意味で何を言いたいのかわからなくなる。世界の多くの人にとって英語は第二言語であることも関係していると思う。

3. 主語を省略できる日本語、できない英語

一方で日本語のメリットとしては主語や述語を省略してもなんとなく意味は伝わる。例えば、「このシステムを活用することで、業務効率が向上する」というメッセージを書きたい時、これをちょぬ自動翻訳すると"By utilizing this system, work efficiency will improve."となるが、このままでは、誰が何をするのかが明確でなく、主語を補わないと英語として違和感がある。しかし、単純に "We can improve work efficiency" や "You can improve work efficiency" と訳すと、意図しない主語が付与され、クライアントとの関係性によっては不適切になる可能性がある。

例えば、人間以外を主語にする

"This system improves work efficiency."
"Automation leads to increased efficiency."
itを使って主語を曖昧にする

他にはit を使って主語を曖昧にする、みたいなテクニックも使える。

"It is possible to improve efficiency through this system."
"It is recommended to implement this solution."
このように、明確な主語が不要な表現を選ぶことで、意図しない「We」や「You」の使用を避けることができる。

4. 実際にどうすればよいか

英語でスライドを作るとき、日本語のスライドを単純に翻訳するのではなく、以下のステップを意識することが重要。

1. 日本語でスライドを作る前に、全体の構成を整理する
英語スライドは「調査結果を提示するだけ」では不十分。
結論を先に述べ、補足情報を後から示すスタイルを意識する。
2. スライド1枚あたりの情報量を減らす
文字を詰め込みすぎない。
グラフや図を活用し、視覚的に伝える。
3. 英語のロジックに合わせてメッセージを作る
文章ではなく、箇条書き(Bullet points)を活用する。
シンプルな動詞(Improve, Reduce, Increase など)を中心にする。
主語を慎重に選ぶ(We, Youを避け、人間以外を主語にする or It構文を活用する)。

5. まとめ

英語のスライドは、日本語スライドをそのまま英訳したものとは異なり、よりシンプルかつ抽象的な表現が求められる。さらに、日本語のスライドでは主語をぼやかして書くことができるが、英語では主語を明示する必要があるため、そのまま訳すと意図しない主語が付加されてしまう。

翻訳の手間を減らし、より伝わるスライドを作るためには、日本語の時点で「抽象化」と「適切な主語の選択」を意識することが鍵 になる。

単に「英語に訳す」のではなく、「英語のロジックで考える」。この視点を持つことで、より伝わる英語のスライドを作れるのではないか。