Goodな生活

INTPの好奇心の受け皿

堀辰雄(1948)『菜穂子・楡の家』

同作者の「風立ちぬ」を読んだ後に続けて読んだ。
「楡の家」は「菜穂子」のエピローグ的な位置付けであり、感情で物事を判断する自分と理性で判断する菜穂子との違いが両者を隔ててしまうこと、外見と内面とのギャップに苦しむ母親の苦悩が描かれる。菜穂子は周りを取り巻く世界からの解放を渇望しており、孤独と同時にどこか清々しさも感じている。
「何処から来ているか自分自身にも分からない不思議な絶望に自分の心を任せ切って気の済むまでじっとしていられるような場所を求めるための、昨日までの何んという渇望、それが今すべて叶えられようとしている」
そして明は思いを素直に言葉にせず、責任や結論から距離を置こうとする。
「明の癖で、彼女の上へ目を注ぎながら、彼女を通してその向こうにあるものを見つめているような眼つきを肩の上に感じながら・・・」

新宿と八ヶ岳というつながってはいるものの、断絶された二つの世界の対比が印象的だった。中央線のホームに佇む様子など映画のワンシーンになりそうな描写だった。