Goodな生活

INTPの好奇心の受け皿

井上ひさし(1976)『偽原始人』

友人に勧められて文庫本を購入。
小学生の主人公が「自分のやりたいことがないから子供に干渉する」という指摘は、親の行動を自己投影の結果と捉えている一方、視点であり、親はそれを愛情表現だとして正当化する。どちらも自分の立場では正しいと信じており、結局議論は平行線のまま進んでしまい両者の断絶は埋まらない。

親と子の価値観の対立、学校教育への反発のテーマは『ぼくらの七日間戦争』とも共通するものがあるが、特徴的なのは教育者の立場でありながら主人公たちの味方になり、受験戦争への異を唱える容子先生の存在。

最後は自分自身を変えるという、主人公がいかにも長続きしなそうな決意を強くして、物語は終わる。絶対続かない。強固であるが持続性はない。
自分にもこう言う時代があった。決意だけが心をいっぱいにする状態。そしてそれは長続きせず、やがて社会や親への反抗を諦め、丸くなっていく。
この主人公たちも同じ道を辿るのか。何も結論が出ないからこそ印象的な終わり方だった。