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藤原正彦(1981)「数学者の言葉では」みんな泣きながら仕事をしている

 

 

 

先月中頃、どうにも仕事が苦しい時期だった。何か気晴らしをしようと初めて立ち寄った古本屋で本の方から語りかけてくるように目に止まった。

 

著者がコロラド大で会った学生ハナの気持ちは痛いほど分かる。研究や仕事のために自分のプライベートを捨てるたび、何かを失う感じがする。これほど犠牲を払わなければならないのかと、達成感よりも喪失感が上回ってしまう。でもその厳しさを選んだのは自分。自分で選んだのにいざそれに直面するとそれから逃げ出したくなる。彼女は敬虔なシスターだった。もしかすると完璧主義な部分があり、数学に重きを置き過ぎる生活というより自らが時間を管理できないことが我慢なからなかったのかもしれない。

 

ハナ側だけではない。教授側の思いも分かる。厳しい意見を言う人の心にも、弱い部分があり、それを欺きながら、人知れず泣きながら過ごしている。そこに情で訴えてはいけない。自分で乗り越えなければいけない。

 

自分はどちらかというと情操的魅力を使って生きている気がする。生きてきた、というより、逃げてきた、と言うべきかもしれない。相手に有無を言わさないような迫力のある、専門的魅力はないだろう。

 

みんな辛さを抱えて生きていることがどうも見えにくい。評価や指導をする側も、される側も、心で泣きながら仕事をしている。スキルや能力ではなく、このどうしても蓋を出来ず、逃げられない感情が言葉にされていたことが、自分にとっての救いだった。

 

そしてもう一つこの本から得たことは、どんなに仕事の進みが遅くても、文章は書いていれば終わりに向かうということ。ひらめきが必要な数学との違い。ある時点を境にして景色が開けるのではなく、どんどんと暗闇が空けていく。だから仕事が進まない時、この考え方を頼りにしたいと思う