東京大学出版『統計学入門』第6章の学習メモ。ポワソンの少数の法則(law of small numbers)について。別名ポワソンの極限定理とも呼ばれる。
定義
ポワソンの少数の法則は、二項分布の密度関数の極限をとると、ポワソン分布の密度関数に収束する。
ポワソン分布は単位時間あたりの事象の発生確率の平均が与えられたときの、事象の発生確率を求めるために使われる。
(1)の左辺はとした場合のの極限であることに注意したい。は定数(パラメータ)なので、が大きくなるとは小さくなる。
、、はそれぞれ何を意味するのか。
- は単位時間や単位回数あたりの事象の発生確率の期待値(平均)。事象とは、例えば1時間あたりの地震の発生回数等。
- 、はそれぞれ二項分布における試行回数と事象の発生確率であり、は二項分布の期待値(平均)。
二項分布はとの2つのパラメータで規定されるのに対し、ポワソン分布は1つのパラメータによって規定される。
証明
(1)の左辺を展開すると、
最後の等号では、が無限大となり、以外の分数部分はすべて1になりキャンセルアウトされる。
また、指数関数の極限の性質を用いている。
少数の法則の意味
少数とは、発生確率は小さい、つまり滅多に起こらない事象という意味である。『統計学入門』によると、初めてポワソン分布が用いられたのは「馬に蹴られて死んだ兵士の数」を見積もるためであり、観測単位(軍団の数)あたりの死んだ兵士の数の期待値が、のポワソン分布にあてはまった。試行回数は大きいものの、成功確率の小さな事象の期待値はポワソン分布で近似できる。ただし、発生確率の低い事象の発生件数がポワソン分布に従う、と解釈するのは間違いである。単位時間当たりの発生件数の多い、つまりが十分に大きなポワソン分布も存在しうる。