はじめに
この記事では、ブラウン運動のさわりについて扱います。統計検定準1級の出題範囲のうち、確率過程の基礎に該当するトピックです。
小項目 | 項目例 |
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確率過程の基礎 | ランダムウォーク、ポワソン過程、ブラウン運動 |
ブラウン運動とは
回帰分析における誤差項は、それぞれ独立に同一の確率分布に従うと仮定しました。これに対し、確率過程は時間とともに観測される確率変数の列、を意味します。ブラウン運動(Brownian motion)は、確率過程の1種であり、もともとは英国の植物学者ブラウンによって命名された微粒子(花粉粒子)の不規則な運動に由来します。その後、数学者ウィーナーが数学面を研究したため、別名ウィーナー過程とも呼ばれます。
ブラウン運動を定義します。
連続時間の確率過程を考えます。
確率過程が次の条件を満たすとき、ブラウン運動である
- は確率1で連続。
- 区間が重ならない変化分(増分)は独立。すなわち、任意のに対して、とは独立になる
- 任意のに対して、となる*1
- 任意のに対して、となる
3.の性質は独立増分性、4.の性質は定常増分性と呼ばれます。独立増分性は、重ならない時間幅(1点のみ共有することは問題ない)に起こったそれぞれの変化分は無関係である、ことを意味します。例えば今月の残業時間の変化分と先月の残業時間の変化分は無関連です。ただし、値の変化分が無関係なのであって、2つの値は無関係ではなく、増減の傾向をもつ場合もあります。増減の傾向を除けば、大小の互いに時間に無関連な、無数の原因(個別の、ランダムなショック)による変化が現在まで積み重なり、このランダムな変化は4.の定常増分性により正規分布をなし、その変化分の大きさは経過時間に比例する、これがブラウン運動です。
ブラウン運動の性質
定義より、平均と分散は、
共分散は、において、
です。は無関係ではないことが分かります。一般的に共分散は、
です。の相関係数は
です。がに近づくにつれて、はに近づきます。
したがって2時点のブラウン運動の組み合わせは、平均、分散、相関係数の2次元正規分布に従います。多変量正規分布では無相関と独立に区別はありません*2。先ほどはは無関係、という言葉を使いましたが、無相関と独立のどちらの意味でもあてはまります。
感想
対数正規分布、ブラック=ショールズモデルの導出もやりたかったですが、確率微分方程式周り、まだ理解が追い付いていません。これらは別の記事で扱いたいです。それからRのパッケージ(sde)を使ってブラウン運動のシュミレーションもやってみたかったのですが、うまくインストールできませんでした。これも別の機会に。。。
読んでいただきありがとうございました。