Goodな生活

INTPの好奇心の受け皿

植村直己(2014)『北極圏1万2000キロ』

初版は1979年。3年前に読んだ『青春を山に賭けて』より4年後の本になる。今回の著者は個人の冒険家というよりも、犬を率いてエスキモーと協力しながら旅を進める「組織人」「チームリーダー」の動きをしている印象が強い。人家と道なき道を交互に行き来しており、エスキモーの暮らす日常が非日常に対してとても鮮やかに描かれている。地図も磁石も使わず氷河の上を旅する彼らへのリスペクトに溢れている。後半のアラスカでは石油開発の進む中で失われていく手付かずの環境に対する憧憬のようなものも感じた。

組織人としての著者は人を動かす、ならぬ犬を動かす。犬ぞりを引いてくれて倒れた一匹が知らずに料理されてしまったところ、どうしても発情期の一匹をコントロールできず射ってしまうところでは正直な心情が吐露されている。時に犬に逃げられ、注意を怠り荷物を落とす場面では、頭は冷静ではあるが疲労で判断力が徐々に落ちてくる様子が伝わる。

印象に残ったのは最後の文章で、冒険とは個人の満足のためだったと締めくくる。

それは科学者のように、人のために貢献しようという気持ちなどではない。極地犬を日本に連れ帰ったのと同じように、ただ自分の気持ちを満足させたいためのものである。いいかえるなら、それは誰しもがもつ冒険心であり、あえていえば、人それぞれが生きるうえで、それぞれに合った型で試みている冒険と同じだと思う。