Goodな生活

INTPの好奇心の受け皿

4年かけてクラシックギターを作った

2022年の5月から約4年かけて、今月の初めに、ようやくクラシックギターが完成した。自宅から電車とバスで1時間ほどかかる工房に週末に通い、少しずつ進めたギター制作がようやくひと段落ついた。「ギターを作る」と言っても全て自分の力で作業が進められたわけでは決してない。かなり先生の手が入っているので、ギター制作体験のコースを終了した、と表現する方が正しいと思う。

なぜギター作りを始めたのか

そもそもはコロナ禍の2021年頃にやりたいことを書き出す中でギターを作ってみたいという気持ちが芽生え、偶然にもギター制作教室を開催する工房を見つけ、何かの拍子に工房に訪問してお願いしてみたところ、受け入れていただいた。そもそもアコースティックとクラシックギターの違いもよくわかっておらず、話を聞いて初めてクラシックギターを作る工房だと理解した。まあギターが作れるならクラシックでもいいや、ぐらいの状態で、あまりに前知識のない生徒だったと思う。

アコースティックギター自体は中学生の頃から趣味で触っており、気分転換に音を出すのは好きだった。本当によくできた楽器だと思っていて、特に人間の左手とフレットと6弦で多彩な和音を表現できる機能的な凄さ、仕組みは深く理解したいと思っていた。ギターの内部の構造や音響にはそこまで興味があった訳ではない。今持ってるアコースティックギターもかなりボロボロの状態で音が出ればいいかなと言う状態のもの。この曲をなんとしても弾きたい!という強い気持ちもなく、ましてやギター制作家になりたいという気持ちもないので、非常にふわふわした状態で制作を始めた。

途中で自宅で進めた工程もあったが、結局工房には約40回通った。先月の最終日もまさか今日で最後とは思ってなかったので、突然卒業式がやってきた感じではあった。やっと区切りができてよかったという気持ちと、完成してしまい少し寂しい感じもある。あまりにのんびり続けていたので、見かねた先生がちゃんと終わらせてくれたのかもしれない。厳密に言うとまだ表面の塗装のツヤ消し、ラベル貼りなど残ってはいるものの、弦も張り、楽器として弾ける状態にはなった。

いくらかかったのか

材料費は
表板 35,000円
ロゼッタ 2,000円
力木・たこ足材 4,000円
ネック・ヒール材・ヘッド 20,000円
糸巻き 20,000円
駒材 1,000円
横・裏板 40,000円
力木(裏板用)1,500円
ライニング材 4,000円
エンドブロック 500円
裏板用割れ止め 500円
ビンディング 4,000円
パーフリング 2,000円
指板 20,000円
フレット 1,200円
ナット・サドル 800円
塗料 3,000円
計 159,500円

これとは別にレッスン料が合計で約200,000円、他にも現代ギターの図面(トーレス)、セラックを溶くためのエタノール、エタノールのケース、塗料用のブラシなど細々したものを購入。工房までの交通費まで入れるとざっと40万円ほど。ちなみに先生の作ったギターを買うとなると100万円かかる。なので(ほぼ)同じ材料を用いていると考えると得。木材が高いのには理由があり、時間をかけて乾燥させているため。若い木だと音が暴れてしまう。何十年も寝かせた木材が初めてギターに使えるようになる。

ギター作りは上達するものなのか

結論から言うと1本作っただけで技術が身に付くわけではない。普段ノコギリやノミ、ヤスリがけしないような人間が、たまに週末道具を触ったからと言って上達も何もない。作業用のエプロンも持ってなかったし、そもそもキャンプの薪以外で木材に触れる機会も自分にはない。なので自分のやっていたのは木工体験に近い。他の生徒さんは例えば自分の道具箱や自宅に作業スペースを持っていたり、すでにエレキギターやウクレレを作ったことのある人もいた。そういう人に比べるとあまり自分は下地がない。一方でそんな状態で教室に行ってもなんとかギターの形に仕上がってよかったと思う。結構リピーターになる生徒さんもあり、2本目、3本目を作っている話も聞いた。

なぜ同じ設計図でも音が変わるのか

ギターの制作には免許がない。結局制作家によって音が変わるので、過去の有名な制作者の図面を使って作っても著作権上は問題がないらしい。一応メイキングマスターギターと言う制作家のためのバイブルがあり、作り方は書いてあるが、書いてあることとそれを実現できることは全く別で、ここに手作業ならではの難しさがある。なので設計図や説明書があるようでない職人の世界が広がっている。

楽器屋で売られている数万円(安ければ数千円)のギターは基本的には工場で作られた量産品。でなければその値段で販売して利益が出るはずがない。平日の自分の働き方ももしかするとこの工場のようなものかもしれない。効率よく、デジタルな成果物を仕上げていく。一方で工房にはそういった行き過ぎた効率化を止めるような少し緩やかな時間が流れていたように思う。「1時間作業したら休憩する」と言うルールもあった。

次はどうするのか

1本無事完成して満足したので、次も作ろう!と言うよりも演奏の方の練習をしたい。これまでオモチャのようなアコギをたまに音を鳴らすだけの状態を10年ぐらい続けてしまったので、全くギターは全く上達していない。我流でやっているので変な癖も結構ついてしまって、行き詰まり感がある。ギター教室で会った人の中にはプロの演奏家や演奏の教室をされている人がいたので、次はその教室に通ってみるのも良いかもしれない。

昔南伊豆で大工をやっている人と話したことを思い出した。彼は小さなピザ窯は何個も作っていたが、茶室を作るのに5年掛かったという。5年も時間がかかるものを何個何個も作れない。茶室ほどのスケールではなく、技術力も全くないが、自分にとってはこのギターも茶室のようなものかもしれない。次作るともう少し容量よく作ることができるかもしれない。でもまだまだ他にやりたいことがあるし、もしかしたらもうギターを作るのは最初で最後かもしれない。なので、大変そうだけど、人生で外せないものは早く着手した方が良い。計画通りには絶対進まない。