昨年読んだ宮崎駿の『出発点ー1979~1996』とにかく好きな本だと紹介されていて気になっていた本。
タンザニア・ダルエスサラームでのシェルの会社員生活、そしてイギリス空軍として第二次世界大戦に参戦する主人公の手記。激動する時代の中で、どこかそれを淡々と、その一瞬一瞬を切り取るような爽やかさをもって綴られた文章、なんというか生命の息遣いを感じる。
宮崎駿も書いているがサン・テグジュペリの『人間の土地』はもっと抽象的。ロアルド・ダールはあくまで普通の人の視点からたまたま遭遇した特異な環境で最善を尽くす、感じがする。
イギリス空軍に入隊するため、ダルエスサラームからケニアのナイロビにまで約960kmの行程に出発する際
こういう長距離のやや危険な旅をたった一人でするときは、喜びや恐怖といった感覚の一つ一つが極端に増幅されるもので、黒塗りの小型フォードで中央アフリカを北上する二日間の奇妙な旅のあいだに起きたいくつかの出来事は今も鮮明に記憶に残っている
例えば開けた登山道を一人で歩いているとき、感覚が研ぎ澄まされるのを感じたことがある。まるで自分が今世界を作っているのような、世界がたった今始まったような。このみずみずしく、美しい景色が文章から漂ってくる。