Goodな生活

経済学修士→環境コンサル→データサイエンス

『小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力』

今年4月、著者の立花隆氏の訃報が流れた。ちょうどそのタイミングで先輩に勧めていただいた本である。本書は2008年ノーベル物理学賞を受賞した小林・益川両教授の提唱したクォーク*1の理論の証明のプロセスを追ったドキュメンタリー。証明の主役は、つくば市にある高エネルギー加速器研究機構KEK)である。タイトルにあるBファクトリーとは、B中間子を生成する実験、研究機関の意味であり、KEKを指している。巨大な加速器のなかで中間子を発生させ(データを生成し)、上述の理論が正しいかどうかを検証する。

一般読者向けに書かれているとはいえ、内容は高エネルギー物理学なので、まあ理論的なこと(素粒子の話)や加速器の設計について面白いと思えるほど理解はできなかった。ただしこの加速器について、制御ポイントが数十万(原子力発電所は1万ぐらい)、電子銃が電子に与える電圧は200kV(送電線を通る特別高圧よりも少し低い)などと聞くと、凄まじい機械だということが素人ながら分かった。

理論的なことはさておき、証明(実証)の方法としては、割りとオーソドックスな統計学が使われるらしい。オーソドックスというのは、理論値(予測値)と観察値にどのくらいの差があるかを検定したり、回帰分析によって得られた誤差の分布をプロットして違いを確認する、等。

他に印象に残っているのは、

  • 研究の進め方としてのブラインドアナリシス(理論とデータを一致させるというバイアスが生じないよう、データの生成が終わってから理論との整合性を分析を行う)
  • 生成したデータのオープン化
  • 研究機関同士の国際的な交流

など

この著者には他にも田中角栄研究など様々な分野の著作があるらしい。ぜひ読んでみたいと思った。

以下、付箋を貼った箇所の中から抜粋。

現代の素粒子物理学実験は、多くの測定器で大量のデータを取得し、それらデータを統計的に解析(カイ二乗検定)して、データの分布から最良の推定値はこれこれと推定するが、それにはこれだけの誤差がついているというようなきわめて厳密な発表の仕方でなされる。小林・益川理論の検証実験も、ずっとそういう形で結果の発表が行われてきた。

日本側は加速器が高齢のお盆休みに入り(日本の夏季電力事情から休まざるを得ない)、アメリカにはそれがなくて連続運転できるところが強みといえば強みなのですが

*1:素粒子のあつまり、詳しいことは知らないです