Goodな生活

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2017年、新卒で民間シンクタンク入社。学んだこと、考えたことの記録。

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【読書】黒部の太陽

黒部の太陽

黒部の太陽

きっかけ

2020年9月、立山登山の道中で黒部ダムを訪れたこと。

感想

当時(1956年着工)の国内の電力需要のひっ迫度合いと、黒部ダム建設の経緯が説明されている。小説という形ではあるものの、登場団体・人物がすべて実名であるためか文献情報に基づく部分が多く、登場人物の内情に迫った記述は少なかったように思う。良くも悪くも電気事業者の委託で書かれた優等生のような本であり、労働環境の劣悪さや、水利権をめぐる地方自治体との折衝等、暴露本としての要素はない。

立山に登った後であったため、具体的な地理のイメージをもって読むことができた。

メモ

当時のエネルギーミックス~火主水従へ

1962年に電気事業用の発電量のうち、初めて火力(54%)が水力を上回り、火主水従のエネルギーミックスが達成された。火力発電では燃料を焚くため常にコンスタントな運転を行う方が望ましい。そこでピーク時の調整用電力としてダムの水による水力発電が必要とされた。

人跡未踏の秘境

黒部川そのものが世間に明確に知られたのは、江戸時代の中期になってからだった。加賀前田藩と、その奥山廻りの役人たちは立山地方の地勢や黒部川の詳細について相当な調査を行ったが軍事上の機密により世間に明示されなかった。

黒部川の黒部はアイヌ語のグルベツ(魔の川の意)に由来するという説がある。北陸地方には他にもアイヌ語に起源をもつ地名があるらしい。アイヌは加賀前田藩の統治の始まるずっと前から、この天然の要塞を知っていたのだろうか。

関電トンネルの破砕帯

黒部川流域はフォッサマグナ糸魚川ー静岡構造線)とごく近く、かつほぼ並行している。日本の地質構造は構造線を境に東西が変わっており、西側が中生代(約6,000万~2億年以前)、東側は主に新生代(約6,000万年前から現代まで)に属する第三紀層および第四紀(最近約百万年前)の火山岩によって広く蔽われている。ここでは地質年代別に岩石の圧砕現象が起こり、立体的で複雑な断層が生じている。湧き水は圧砕された岩石のすきまを通り、長い年月をかけて地表から滲み込んでいた水であり、トンネルの掘削が破砕帯まで及んだことにより、岩と岩の間が緩み、急激な湧き水となった。

破砕帯の湧き水は天然水として販売もされているし、展望台近くで飲むこともできる。