自己回帰過程(AR過程)
過去の観測値に依存する同一変数が従う過程が自己回帰過程(Autoregressive;AR process)である。現在の値()を過去の値()に回帰させ、p期前までの値に回帰させる場合は「p次のARモデル」と呼び、AR(p)と表記する。AR(1)は、
(7)を逐次的に過去に向かって解くと、
(8)の最後の等式では、からへの影響はであり、であれば、過去から現在の値への影響は時間差が開くほど小さくなり、であれば時間にかかわらず一定(符号を変えながら一定)、であれば過去にさかのぼるほど現在への影響力は大きくなる。の場合、AR(1)は共分散定常となる。
一般的にAR(1)過程は、(7)に定数項を加え、
AR(p)過程は、
と表す。AR(p)過程が共分散定常であるのは、p次多項式
のp個の解の絶対値が1より大きくなるとき()。(11)を変形すると、
となりが大きいときは小さくなり、AR過程は動きがおとなしくなり定常になる、というイメージ。
AR過程の具体例
沖本(2010)に従い、以下のAR(1)過程の挙動を確認する。
(13)のうち、パラメータはである。いくつかのパラメータを組み合わせ、以下(a)~(f)のAR(1)過程を生成する。
上表のうち(e)(f)は共分散定常ではない。(e)はの係数が1であり、単位根過程と呼ばれる。(f)はが1より大きく発散的な過程となっている。(c)(d)の係数は負の値であり、平均と比べて大きな値と小さな値を交互にとるため、上下の変動が激しい。(a)(b)を比べると、(a)の変動はより緩やかになっている。の符号が正であり、その値が大きいほど、緩やかな挙動となる。