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【読書】中国経済講義

きっかけ

2019年3月に上海に出張に行き、帰国後購入。他にも中国関連の新書を3冊購入したがちゃんと読んだのはこの本だけ。

メモ

GDP統計、不動産バブル、格差、共産党体制とイノベーションなど幅広いトピックがまとまっている。特に面白かったのはゾンビ企業の話とパクリ経済の話。

2017年8月1日付で中国政府は「統計法」実施条例を施行し、経済統計の水増しや捏造を厳しく摘発するようになった。この背後には反腐敗キャンページを進める習近平政権の強い意向があると言われている。腐敗が蔓延している地域ほど、役人の都合の良いように統計数字が操作されやすいようと考えられるからだ。遼寧省を含む東北地方は、重厚長大型の国有企業を多く抱える地域であり、鉄鋼の過剰生産が過剰になる昨今は特に低迷が伝えられている。

王は2015年5月29日付けの経済誌『第一財経日報』のインタビューに答え、習近平政権が進める反政府運動によって灰色収入が大幅に減少したと述べている。(反腐大幅減少灰色収入)しかし同インタビューの中で、そのエビデンスとなるような新たな研究成果が紹介されているわけではない。また筆者が調べた限り、王はそれ以降「灰色収入」に関する論文の発表やメディアでの発言を行っていない。したがって、反腐敗運動が本当に前記のような「灰色収入」の解決に効果があったのかどうかは、今後解明されるべき課題だという他はない。

中国経済を語る上で、国有企業改革のゆくえが重要なカギ握る。「ゾンビ企業」、つまり経営が破綻しているにも関わらず、銀行や政府機関の支援によって存続している企業は、その多くが国有企業だと言われている。日本経済の長期停滞要因の原因としてゾンビ企業存在に着目した代表的な研究が、MITのリカルド・カバレロらによる研究論文である。彼らはゾンビ企業を、「生産性や収益性が低く本来市場から退出すべきであるにもかかわらず、債権者や政府からの支援により事業を継続している企業」と定義した。その存在が健全な企業の成長を阻害し、生産性を引き下げる、と主張したのである。

論文はこちら。

Ricardo J. Caballero & Takeo Hoshi & Anil K. Kashyap, 2008. "Zombie Lending and Depressed Restructuring in Japan," American Economic Review, American Economic Association, vol. 98(5), pages 1943-1977, December.

Caballero et al. (2008) では、「財務データ上の支払利息」< 「最低支払利息の理論値(推定値)」を満たす企業をゾンビ企業と定義する。最低支払利息は、長短プライムレートや社債の過去 5 年間の発行実績の最低クーポン率等を説明変数とした回帰式の推定により、「最低限支払うはずの利息(最低支払利息)の理論値」を求める。実際の支払利息がそれを下回っている企業は金利減免を受けていると仮定して「ゾンビ企業」を識別する。

深圳市の電子産業などによるイノベーションの第一の特徴は、知的財産権の保護が十分ではない状態の下で生じている点である。第二の特徴は、法の支配が貫徹せず、不確実性の大きな市場において、アリババやテンセントなどの大手IT企業が「情報の仲介者」としてプラットフォームを提供することで、安定した取引を成立させる仕組みが働いていることである。(中略)中国では携帯電話事業などの通信産業は、政府の厳格な管理の下に置かれていた。携帯電話端末を生産するには政府から営業許可を取らねばならず、さらに新しい商品を開発したときには、きちんとネットワークにつながるかどうか接続検査を受けなければならない。ところが汎用ICチップが開発されることにより、営業許可や接続券さ等の行政手続きを受けることなく生産、販売に参入する「山寨(さんさい、ニセモノ)携帯」を製造する零細業者が急増した。これらの零細業者はライセンスの取得にかかるコストが節約できるばかりか、新製品ーそのほとんどが有名企業のモデルのコピーや、従来の機種に目新しい機能をくっつけたものだったーを開発するとすぐに市場に投入することができた。

主流の経済学の考え方でいけば、知的財産権の保護は非常に重要で、企業はイノベーションによって利益を得たいからこそ一生懸命にR&Dを行うのであり、その利益がパテントで守られなければ誰もR&Dをやらなくなってしまう。しかし近年はそれに反論が生まれており、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のカル・ラウスティアラとニューヨーク大学のクリストファースプリングマンの『パクリ経済』である。